原田宗典「家族それはヘンテコなもの」

家族それはヘンテコなもの (角川文庫)
 音楽にせよ絵画にせよ文学にせよ、世に言うアーティスト・文化人はその作品でかつてこれまでに多くの人々を魅了してきた。メロディーの美しさや色彩感覚、言葉の響きなどは、それぞれの芸術家一個人の人間性から生まれてくるものだと思う。それだけに、多くの人を惹き付ける作品を生み出す芸術家は、それだけ魅力的な人格を有しているのではないだろうか。と、まあ堅苦しいこと書いてみたけど、これって結構真実だと思う。曲はいいなあと思うアーティストでも、ライヴのMCとかでキライになっちゃうこととかあるしね。
 この作品を読むと作者の人情味というか温かさがひしひしと伝わってくる。普段おどけた語り口で話が進むぶん、ときおり顕われる人情味を秘めた鋭さにはっとさせられる。多少なりとも現実を脚色しているのだろうが、作者の人柄がよく出ている作品。家族編、恋愛編、青春編に分かれている。

千の言葉よりも、一球のカーブ。
これだけで息子というのは父親を尊敬してしまうものである。

やっぱカッチョ悪い恋愛をいくつもしないと、人間の輪郭がしっかりしてこないのではないか、というのがぼくの持論である。

こういう二人を祝福しない神様なら、そんなものはこっちからお断りである。

愛があっても、どうすることもできないことが世の中に存在するのだと悟るべきである。