村上春樹「羊をめぐる冒険 上」

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)
 鼠をめぐる初期三部作の完結編上巻。この著者の比喩表現は得てして言い得て妙なものだが、この作品中では大分トンガった比喩が多く出てくる。実験的というべきか。いとみみず宇宙って何だ。

「本当にしゃべりたいことは、うまくしゃべれないものなのね。そう思わない?」

一人の人間が習慣的に大量の酒を飲むようになるには様々な理由がある。理由は様々だが、結果は大抵同じだ。

「でもこれは当然と言えば当然の話で、自分にも上手く説明できないことを、他人に向かって説明することなんてできるわけはないんだ。」

つまり苛立つことは自らの敗北です。

一千万人もの人間がうろつきまわっている街のまんなかで、電話をかけられる相手が二人しかいないのだ。