村上春樹「海辺のカフカ 下」

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

 風呂に入りながら読んでいて思ったんだけど、村上春樹の作品を読む姿勢として、その内容(ストーリー)全てを理解するのではなく、内容の数パーセントを自分なりに飲み込むということが非常に大事なのではないかなーと思いました。風呂で。
 最近サークルの先輩が急逝されて、その影響かもしれないけれど「死」に関する描写が非常に興味深かったです。
 そして読んでいて感じたこと。村上春樹って初期三部作から一貫してずっと一つのテーマを扱った小説を書いているのかもしれない。作品ごとに切り口は異なりつつも。そしてそのテーマはあまりに大きくて一口に説明することはできない。って考え過ぎか。
 とりあえず「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」より面白かった。有名な作品だけある。

「芸術家とは、冗長性を回避する資格を持つ人々のことだ」

「誰もが恋をすることによって、自分自身の欠けた一部を探しているものだからさ」

「もしほんとうに自由を与えられたりしたら、たいていの人間は困り果ててしまうよ。覚えておくといい。人々はじっさいには不自由が好きなんだ」

「相手が誰であっても、何であっても、話し合わないよりは話し合った方がいい」

人間にとってほんとうに大事なのは、ほんとうに重みを持つのは、きっと死に方の方なんだろうな、と青年は考えた。死に方に比べたら、生き方なんてたいしたことじゃないのかもしれない。とはいえやはり、人の死に方を決めるのは人の生き方であるはずだ。

今日の世界の中心的なテーマは「現状維持」であるようだった。

僕はその凍てついた痛みに、自分の存在をかさねることができる。

僕が必要とすれば、彼女はいつもそこにいる。