藤原正彦「国家の品格」

国家の品格 (新潮新書)
新書なんて久しぶりに読みましたが。正直な話、「頭がいい人、悪い人の話し方」と同じ新書とは思えないほど格が違う。こっちは読んでいると自分が知識人になったかのような錯覚を起こします。小難しそうなタイトルだけど、内容は高校卒業程度の知識があればそれなりに理解できます。高校生にこれ読めって言ってもちょっと難しいかな、という程度。でも大学受験でもっと小難しい文章出るんだから大丈夫なのかな。
ちょっと読後に価値観の変化を感じました。皆が皆納得する内容では無いと思うけれど、「日本人」には是非読んで欲しいと素直に思った。外人が読むと怒りそうだなあ。
「日本のロックはもっと世界で胸を張っていい」と豪語する山口(サンボマスター)や、江戸文化に精通し「昔の侍」なんて曲をつくってしまう宮本(エレファントカシマシ)が好きな人はきっとドキドキしながら読めるはず。
その内容は近代的合理精神の破綻から市場原理、教育、武士道、フランツフェルディナンド*1、トマス・ホッブズ自然権から日本特有のもののあはれカルヴァン派の予定説にまで及び非常に興味深いです。
学校の公民の授業でホッブズアダム・スミスに触れていたのに、もっとしっかり勉強しておけば良かった。そうすれば絶対もっと面白く読めたような。やっぱり無駄な勉強なんてねえなあ。日本の教育はクソだとか豪語せずに真面目にやっときゃよかった。と、話しが逸れてしまった。
これまで自由とか平等とか、皆が唱えているけれど「なんとなく嘘っぽいなあ」と個人的に思っていた概念を、本文で「ウソ」だと名言してくれたのでなんかスッとしました笑。論理はもちろん大事だけれど、論理だけでは世界は成立しない。著者は数学者なのでこれだけでもなんとなく説得あります。共産主義同様に資本主義が崩壊したとき、次の世代を担えるのは本当に日本なのかは疑問ですが。というかちょっとこの著者、少し盲目的なところもありますが、こういうドン・キホーテみたいな人は大好きなので、支持します笑。今日の読売新聞の夕刊の寸評でもこの著者話題になっていたし、取り敢えず多くの人に読んでほしいかも。世の中を多面的に見るための引き出しが一つ増える気がする。
あと去年の11月発行にも関わらず、ライブドア汚職についての批判を匂わせているあたりもすごい。気づく人は気づいていたんだなあ。
なんでこんなに偉そうに書いているのかは自分でもよくわからないけれど。こんなに長くレビュー(?)書いたのは初めてだわー

*1:もちろん暗殺された人。バンドじゃないよ