村上春樹「1973年のピンボール」
そこまで好きというわけでは無いのに、ついつい手を伸ばして読んでしまう村上春樹の作品。一種の中毒性は・・・あるのか?楽に読めるからなのか。謎。
デビュー作の「風の歌を聴け」に続く、三部作のうちの第二弾。確実に前作よりも深みが増した気がする。ブックオフの100円コーナーにあったら即買い。以前は、「春樹の文体は読者を暗闇にあっさり投げ捨てる」みたいなこと言ってる人たちに対して「? そんなに?」みたいな印象持ってたんだけど、これ読んだらなんとなくわかった。突き放される感じ。これまで・・・少しおおげさかもしれないが、なまなましくてどろどろした文体こそが読者に絶望を喚起させやすいと思っていたのだが、春樹の場合は全くの真逆で、簡素で清潔な文体でそれを喚起させる。気がする。電車の中で読むよりも、人の家に泊まって朝少しばかり早く目覚めてしまったときに読むとすごい実感できる。
突き放される感じ、とは別の感覚だが、ピンボールが50台集まった倉庫へ向かう描写は本当に怖かった。この人ホラー書いたらすごいんだろうなきっと。
冒頭に直子という女性が登場するが、これは「ノルウェイの森」に出てくる直子とやっぱり関係があるのかな。主人公がビートルズの「ラバーソウル」を聴いて
「こんなレコード買った覚えないぜ」
と驚いて叫んだのも伏線ぽい*1。
「殆ど誰とも友達になんかなれないってこと?」と209。
「そしてこう思った。どんな進歩もどんな変化も結局は崩壊の過程にすぎないじゃないかってね。違うかい?」
脈絡のないバラバラのカードを抱えたまま、僕は途方に暮れていた。
作中に「マルタの鷹」に対する記述が出てきてちょっとタイムリー。