宮本輝「青が散る」

青が散る (文春文庫)
 宮本輝による長編小説。やたらと長いので何度も挫折しそうになったが、後半になるにつれ終わってしまうのが寂しくなるような作品。大学入学から卒業までの軌跡を描くにはこれだけの分量が必要なのかもしれない。強烈に面白い、というわけではないが、あと数ページというところで「ああ、もう終わりか・・・」と寂しくなるのは非常に不思議な感じ。リアルでないようでどことなくリアルなテニス部の主人公も良い。

「人生の勝敗は体力が決定するんや」

「たかがテニスやないか。命なんかかけられるか」

「若者は自由でなくてはいけないが、もうひとつ潔癖でなくてはいけない。」

人の不幸の上に自分の幸福など築けるものか。

何も喪わなかったということは、じつは数多くのかけがえのないものを喪ったのと同じではないだろうか。