村上龍「コインロッカー・ベイビーズ(上)」

コインロッカー・ベイビーズ(上) (講談社文庫)

コインロッカー・ベイビーズ(上) (講談社文庫)

 村上龍を初めて読んだのは確か高校2年生のとき。英文を和訳したような素っ気ない文体と、世の中や人間の汚いところにスポットをあてた描写が苦手で読めなかったことを覚えている。


 なんとなく図書館に行った際にまたなんとなく借りてしまったのだけれど、読み始めは相変わらず高校2年生のときと同じ感想を抱いた。

 でも、読み進めるにつれて次第に抵抗は減っていった。「血も涙もない、だけど優しさがある」、という不思議な印象を抱いた。こんな感覚は初めてなので、なかなか良い経験をしたと思う。読んで良かったと思える一冊。
 
 なんていうか淡々と描写することによって様々な感情を発生させるタイプの小説としてかなりいい線いってると思います。めちゃくちゃ上から目線。伏線もしっかりしていて、読み返しても切ない。

いずれにしてもその中で自分が静止しているのは耐えられないことだ。

直接空気を震わさない音はだめだ

自分が最も欲しいものは何かわかってないやつは、欲しいものを手に入れることが絶対にできない

みんな静かに眠りたがっている。

いくら発作を起こしてエネルギーを放出し満足しても、熱帯からは遥か遠く離れている。

考える人って彫刻があるでしょ、あれ嫌いなの、あれ見てると爆破したくなってくるわ。

ねえニヴァ、会ったことない人を愛したり憎んだりしていいと思うかい?