村上龍「コインロッカー・ベイビーズ 下」

コインロッカー・ベイビーズ(下) (講談社文庫)

 誠に勝手ながら個人的にこれに帯を付けるとしたら、「哀しみに満ちている」とかなんとか。

 五感で言うと、嗅覚に最も訴えてくる文体。汗、嘔吐、香水、重油etc・・・。生理的に無理な人もたくさんいるだろう。でもなんていうか、読んでおいて良かったというか。やっぱり小説そのものに圧倒的なエネルギーが含まれているというか、孕まれているというか。そんな読後感。

かなり間が空いてしまったが、上巻の感想はこんなだった↓
http://d.hatena.ne.jp/suzushige/20080624
あんまり変わって、ない。

全力疾走をすれば決して倒れることはない

「何年か先のことを気にしてるの?バカね、死ぬ時のことを考えてガタガタ震えてる奴と同じじゃないの」

なあ、どんなにいいものを食ってみんなからチヤホヤされても、お前は孤児でオカマだったことに変わりはないんだよ(中略)ハシ、孤児でオカマだったことを忘れちゃ駄目だ

「自分の欲しいものが何かわかってない奴は石になればいいんだ、あのあけびの女王は偉いよ、だって欲しいものが何かわかってない奴は、欲しいものを手に入れることできないだろう?」

「お前女に威張り散らして楽しいのか」

家族を作れ、お前から始まる家族を作るんだよ。

答えてよ、ねえ、大事なことなんだよ、答えてくれよ、僕はみんなの役に立ってるだろうか、みんな僕のせいで幸福になってくれているだろうか、僕が願ってるのは、それだけなんだ、あとは何も要らない、D、本当に僕が欲しいのはそれだけだよ、みんなが楽しそうに笑うことだけなんだ(中略)僕はただみんなから好かれたいんだ

でもねニヴァ、僕だけじゃなかったんだよ、必要とされてる人間なんてどこにもいないんだよ、全部の人間は不必要なんだ、それがあんまり寂しかったから僕は病気になったんだ

解説の、「かけがえのない人間とは、まさに逆説というほかないが、不必要な人間ということなのだ」というくだりが印象的だった。