姜尚中「悩む力」

悩む力 (集英社新書 444C)

悩む力 (集英社新書 444C)

 夏目漱石ウェーバーを軸に、「悩むことの有意性」について強く訴える本。読んですぐにどうなるタイプの事柄じゃないけど、なかなか問いかけられるものがありました。
 主に「自我」「金」「知性」「青春」「労働」「信仰」「愛」「死」をテーマとした8章から構成されています。あらゆる状況で規制緩和(自由化)が進む現代だからこそ、悩み抜く行為に目を向けなければならないのではないか。ゆっくり読みたいです。

しかし、自由の拡大と言われながら、それに見合うだけの幸福感を味わっているでしょうか。

変化を求めながら、変化しないものをも求める。現代人は相反する欲求に精神を引き裂かれていると言えます。

「自分の城」を築こうとする者は必ず破滅する

すなわち、人とのつながりの中でしか、「私」というものはありえないのです。

ここの部分は若干の疑問を感じる。「人」というよりも・・・何だろう。完全に人とコミュニケーションが取れない状況に陥った経験が無いのでよくわからないけれども。うーん。

お金というのは実に不可解な性質を持っていて、「労働の報酬」のような意味を離れて「お金」として独立してしまうと、それ自体が目的になってしまいます。

われわれはみな電車の乗り方を知っていて、何の疑問も持たずに目的地に行くけれども、車両がどのようなメカニズムで動いているのか知っている人などほとんどいない。しかし、未開の社会の人間は、自分たちが使っている道具について、われわれよりはるかに知悉している。

自分が生きている意味を考えたり、人間とは何かを考えたり、人とつながる方法を本気で考えたり、自分と世界の関係を考えてみたりする。実務的な問題解決を第一とし、万事を淡白にやりすごしている人は、「そんなことをマジでやるのは馬鹿馬鹿しい。時間の無駄だ。それこそ意味がない」と言うでしょう。しかし、そんなふうに生きていたら、たぶん、最終的にはもっと大きな孤独を抱えることになると思います。

これはとても象徴的で、「人が働く」という行為のいちばん底にあるものが何なのかを教えてくれる気がします。それは、「社会の中で自分の存在が認められる」ということです。

この意味で、エゴイズム的愛の極致は、「相手を消滅させる」ことにあるのです。

ここで山岸由花子を思い出した(ジョジョ)。

人は相当の苦悩にも耐える力を持っているが、意味の喪失には耐えられない(V.E.フランクル