茂木健一郎「化粧する脳」

化粧する脳 (集英社新書 486G)

化粧する脳 (集英社新書 486G)

 内容は多岐に渡り、一冊を通じての強い主張といったものは感じにくい。
 大枠の内容は、ヒトの社会性に脳科学の見地から向き合ったようなもの。ミラーニューロンやピアプレッシャー、アルファーメイルとトロフィーワイフにメタ認知など、馴染みのない用語も平易に解説してくれている。
 読んだからといってすぐにどうなるというタイプの本ではないけれど、知的好奇心をくすぐるにはもってこい。ちょっと哲学的な内容*1も絡んでいて、わくわくしました。
 『批評とは無私を得る道』と小林秀雄の話が載ってたけど、この文章全然批評じゃないな。やっぱり感想だ

顔は心の窓である。

人間のパーソナリティはかくも多面的で、柔軟性があるものなのだ。つまり、絶えず脳は「化粧」をし続けている。

だから、自己の人格は他者の数だけ多面的であり、可塑性が高いものなのだ。

人間の脳が一番喜びを感じるのは、他者とのコミュニケーションだということはよく知られている。とくに目と目が合うことは一番嬉しいことだ。

自己は、他者を通してしか確認することができないのだ。

子どもが果敢に新しいことに挑み、冒険することができるのは、失敗しても守ってくれる、自分には帰る場所があると思うことが出来る「安全基地」があってこそだ。

ピアプレッシャーは、社会的な協力関係を高度に発達させた人間だからこそ抱く感覚なのだ。

大勢が支持するものにさらに票が集まっていってしまうという構造がある。

つまり美人かどうかは、物理的な造形より、コミュニケーションのとりやすさに重点が置かれていると考えられる。

秘して黙することも、一つの言語なのである。

ところが、女性が「オバさん」化してしまうと、「隠す/見せる」のコントラストを欠いてしまう。

しかし、この場合に対話の相手が受けとめるのは、明示された欠点よりも、むしろ自分を客観的にみることのできる成熟した知性のほうだ。

世界という鏡に映してみれば、外国という鏡に映してみれば、日本という国の成り立ちやシステムがみえてくることがある。

*1:鷲下清一の「ちぐはぐな身体」が近い