堀井憲一郎「若者殺しの時代」

若者殺しの時代 (講談社現代新書)
 もはやインパクトのあるタイトルで勝負!ってのは新書界での常識なのでしょうか。
 非常に社会学的で、各年代の若者たちを追った内容は単純に興味深かった。雑誌アンアンの1983歴史的宣言が、クリスマスを「パーティー」から「恋人たちの夜」とするクリスマス・ファシズムの走りだとか。ホームドラマが衰退し、トレンディドラマが台頭してきたあたりに若者はアウトドア派(サーフィン、スノボ)とインドア派(オタク)に二分されたとか。1997年、若者が携帯電話で覆い尽くされてしまったとか。例を挙げたらキリが無いのだが。

 自分のお誕生日に、いったいいくつメールが来たか。そのメールの数で「いま存在する世界の中で、あなたの誕生日を覚えていて、祝ってくれる気持ちのあったすべてのひとの数」が示されるのだ。逃げようがない。来てない人は、誕生日を知らないか忘れたかどうでもいいと思った人なのだ。それがきちんと数字になって示される。

 こういう考え方をすると本当に生きにくい感じがする世の中。携帯電話を破壊して、ようやく世界と繋がったってうたってたのは誰だっけ。
 最後までしっかり読めば、何故「若者殺しの時代」なのかわかる。平易な文体なので読みやすい。首尾一貫しているとは言えないがそこはご愛嬌。最後に「戦う」か「逃げる」かという選択肢が提示されているが、「ニート」とは逃げようとして現代に捕まってしまった若者たちの総称らしい。この本によると。