吉本ばなな「キッチン」

キッチン (角川文庫)
 秋の読書強化月間〜え?いまさらそれ?〜シリーズ第一弾(第二弾はあるのか)、「キッチン」。『全く新しい感性と繊細な文体で、愛と優しさを問い直し、時代の感受性をとらえた大ベストセラー』と文庫の裏には書いてあるけれど、これ書いた人すごいなあ。めっちゃ的確に的を射ている。
 読んでいくうちにどんどん吸い込まれていくような、そんな感覚になる。優しくあるということはやっぱりいいことやな。優しそうで冷たいみたいなのはもうやめよう。

「あの人って、思いつきだけで生きてるからね。それを実現する力があるのが、すごいなと思うんだけど。」

彼にとっての万年筆と彼女にとってと、全然質や重みがちがったのだ。

「本当にひとり立ちしたい人は、何かを育てるといいのよね。子供とかさ、鉢植えとかね。そうすると、自分の限界がわかるのよ。」

何が悲しいのでもなく、私はいろんなことにただ涙したかった気がした。

幸福とは、実は自分がひとりだということを、なるべく感じなくていい人生だ。