坂口安吾「堕落論」
作者の考えに共感できるできないは別として、一つの読み物としてとても面白い。「FARCEに就て」ではずいぶんまどろっこしく書くなあこいつとイライラしたものだが、後半になるにつれ歯切れがよくなってくる。「文学のふるさと」なんかは結構好き。
しかし、過去の慣習にとらわれないことは果たして大切なのか?昔から受け継がれているものは、それなりに意味があるゆえに受け継がれ続けているように思う。倫理観とか。
とにかく戦争やら天皇やら興味深い話がたくさん出てくる。いつかまた読むかもしれないなーと思った珍しい本。
私達人間は、人生五十年として、そのうちの五年分くらいは空想に費やしているものだ。
美しくするために加工した美しさが、一切ない。
それが真に必要なものならば、必ずそこに真の美が生まれる。
人間は永遠に自由では有り得ない。なぜなら人間は生きており、又死なねばならず、そして考えるからだ。
そういった、実践の目標の判っきりしている宗教の前へ出ますというと、禅宗のごとき宗教は、全然意味をなさないのであります。