庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」

赤頭巾ちゃん気をつけて (中公文庫)
 「ライ麦畑の二番煎じだ」とか散々叩かれたりしたみたいだけど、普通に面白かった。確かにまあ語り口はそっくりだし、黄色い女の子のモデルはフィービーなのだろうけど。
 冒頭を読んで「大学紛争を経験していない若者にはわからないのでは」とも思ったけれど、全然そんなこと無かった。100%共感できたわけではないが、共感できたうちのその何%が大切なんだろう。大体ライ麦畑の話だって言葉も文化も違う異国の話なんだし。とにかくライ麦畑よりも赤頭巾ちゃんのほうが好きでした。やっぱりパンより米だな、みたいな日本人再確認。主人公が泥臭く、言いたいことがあるんだけど伝わらないんだろうなあって姿勢をとってるのがリアル。つうかこの本欲しい。

つまりおれだって迷うことがあるとか、失敗することがあるなんてことをわざわざ言うくらいなら、由美の言い草じゃないけど舌かんで死んだ方がましなような気がなんとなくするわけだ。

なんだかうまく言えないのだけれど、でも考えてみればこういうことは、やはり実はもともと他人に言ってもしょうがないこと、そのことをしゃべろうとすると、どうしても自分にきり通じないような言葉でしか話せないなんていったようなことなのかもしれない。

ぼくはなんと自分の部屋のまん中で遭難しているってわけだ。

なんでもいいんだ、いまのぼくを助けるもの、いや少しでも変化させてくれるものなら。

ぼくはもうどうしたって犬死にするわけになんていかない