J.D.Salinger 村上春樹訳 「The Cather In The Rye」

キャッチャー・イン・ザ・ライ
 秋の読書強化月間〜え?今さらそれ?〜シリーズ第二弾。ジョン・レノンを銃殺した男のコートの内側からボロボロになってでてきたとかいうライ麦畑。
 どうにも原書はスラングの固まりらしくて、訳者はそれなりに苦労するみたいだけど、春樹訳は読みやすかった。マジな話。前に図書館で別の訳者のものをちらっと読んだときは、「やっこさん」とかいう単語が連発されていて、こりゃひどいなと思った。見開き1ページに「やっこさん」が5回くらい使われるわけだ。そういうのってほんとにうんざりだよね。正直なところ。
 とまあこんな風に読んでるうちに「うんざり」した気分になってしまう本です。自分感化されやすいので、これ読んでる期間はちょっと口のききかたに難がある感じになっていたけれど。本当に朝目覚めてから読むとげんなりする。主人公のホールデン・コールフィールドは周りをメタメタに言うけど、本当に可哀想なのは主人公だと思う。
 ただこれ若者特有の虚無感が世界中で共感されて超有名になったという話だけれど、そこまで共感しなかったなあ。共感しないというか・・・人生がうんざりだっつうのはもう基本なんだから、わざわざそんなことを本にしたためる必要はないわけで。クソミソみたいな世界だからこそ、キラキラした本が読みたい。ホールデンに「インチキ野郎」と言われようとも。

それからたぶん洗面所に行って、こっそり煙草なんかを吸って、鏡に向かってなるたけ自分をタフに見せかけるわけだ。

「けっきょく、世の中のすべてが気に入らないのよ」

「自分がインチキ人間かどうかなんて、自分じゃなかなかわからないものなんだ」

たとえ百万年かけたところで、君は世界中にある「ファック・ユー」の落書きを半分だって消すことはできないんだからさ。