アゴタ・クリストフ『悪童日記』

悪童日記 (Hayakawa Novels)

悪童日記 (Hayakawa Novels)

 そういえば2005年の女子高生母親毒殺未遂事件で話題になっていたような気がしましたが、あれはグレアム・ヤングの『毒殺日記』のほうでした。
 『悪童日記』を読んだのは2度目だけど(読んでるうちに読んだことを思い出した)、やっぱりどういう感想を持てばいいのかわかりません。社会的に汚いとされる部分から目をそらさず書かれている点と、主人公が2人の男の子という点で村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』と類似しているように感じましたが、『悪童日記』のほうが内面的描写の少ないハード・ボイルド風のためか、底知れぬ冷たさを感じる。

感情を定義する言葉は、非常に漠然としている。その種の言葉の使用は避け、物象や人間や自分自身の描写、つまり事実の忠実な描写にだけにとどめたほうがよい。

「なるほど、それでわしのことを思い出したってわけかい。十年もの間、忘れていたくせに。訪ねて来なけりゃ、便り一つよこさなかったくせに」